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2008-04-02

_ [] 「信じぬ者は救われる」を読んだ このエントリーを含むブックマーク

物理学者の菊池 誠さんと精神科医の香山 リカさんのニセ科学についての対談集。

お二方それぞれの現状認識の交換に留まっていますし、ニセ科学自体の説明もないため、ニセ科学問題の入門書には向いていません。ニセ科学とは何か、またニセ科学の問題点について知るには、菊池さんが NHK で話した まん延するニセ科学 が分かりやすいでしょう。書籍では、メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書 (298))(松永 和紀) が良書です。

おもしろいと思ったのは以下の発言。地球温暖化がエコ=ファッショナブルなものとして認知されているということを受けて、

菊池「マーケティングの問題だという話はずっと言っているんですよ。科学はニセ科学にマーケティングで負けているから、マーケティングを考えなくてはいけないと」

ニセ科学に分類されるあれこれは基本的に現代人の不安に根ざしたものだと私は思っています。健康への不安、将来への不安。人間誰しも長くて100 年すれば死ぬし、将来がどうなるかなど分かりません。つまり不老不死で確実にバラ色の未来なんてものは望めないので妥協が必要なわけです。それぞれが悩んで自分なりの理由付けで不安を受け入れながら生きていくしかない。

が、簡単な解決策というものを提供するのがニセ科学(を元にした情報や商品)です。マイナスイオンはとにかく身体にいい、ある食品を食べれば病気に効く、水道水は身体に悪いので何とか水を飲むべき、などなど。仕組は単純なマッチポンプがほとんどだと思います。まず、漠然とした不安に特定の病気や毒物といった具体的な形を与える(例えば、がん、水道水、保存料など)。次に、問題の解消あるいは飲食物の代替物を提供する(野菜や果物・納豆、何とか水、保存料代わりのグリシン)。グリシンはニセ科学とはちょっと違いますが、不安解消装置としての役割は同じかなと。

不安に対する処方箋というのは元来宗教が担ってきたものだと思います。テレビや雑誌といったメディアがそれを担っているのは、健康に投資する人が多い、つまり金になるからでしょう。

不安解消装置が受ける(売れる)のを見て、メディアは受け手がそれを欲していると判断してさらに不安に関する情報を流し、受けては不安が増幅し……と完全に負のスパイラルです(この流れについては メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書 (298))(松永 和紀) 参照してください)。これを断ち切るには、科学的思考の素養を身に着けてもらう……のではなく、メディアバイアスの影響を低減させるのが効果的だと思います。ここで菊池さんの言葉に戻ってきますが、マーケティング・宣伝によってニセ科学の介在する不安増幅のスパイラルを断ち切るということです。構造上不安増幅のスパイラルをなくすのは難しい気もしますが、メディア側はうければ(売れれば)何でもいいでしょうから、ニセ科学な不安解消装置のメディア露出を減らしてニセ科学ではない不安解消装置のメディア露出を増やす手法が編み出せないものでしょうか。おそらく、まっとうな科学に基づいたものがニセ科学によるものよりも受け入れられるには、「分かりやすさ」以外の基準を採用するように人びとの認識を変えないといけないでしょうから、これが難関でしょうね。

信じぬ者は救われる(香山 リカ/菊池 誠)

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